2020年6月。
あついなぁ、何だか最近職場がとても暑い。地球温暖化?空調の劣化?何にせよ、一刻も早く帰りたいなぁ。そんな事を考えながら、お~いお茶を3分スパンで口へと運びつつ、デスクの前でぐったりとしていた。
椅子にもたれ、大きく傾いだ姿勢でモニターを見つめていると、会社の先輩である小林さん(仮)からチャットが届いた。
Amazon Echo dot(Alexa)で便利なこと。Amazon prime videoでオープニングを飛ばすときに、「アレクサ、1分20秒スキップ」というと、歌を飛ばせる。「アレクサ、次」というと、次のエピソードへ飛べる。「アレクサ、FireTVでユーチューブ」というとFireStickTVを付けてくれる。
エアコンオンオフ、テレビオン、オフ、照明、ライト1、ライト2、空気清浄機、加湿器、ホットカーペット、サーキュレータ、扇風機。
照明ON、OFFは寝るときとや起きるとき、外出・帰宅時に地味に便利。
おすすめ。(以下URL)
小林さんのチャットより
いきなり何ですか。何なんですか?
一瞬スパムを疑ったが、ここはローカルネットで閉ざされし社内チャット、そんな事はありえない。
そしていきなりすぎるこの語り出し、間違いなく小林さんだ。文末のおすすめがスパムのような胡散臭さをより際立たせている。
小林さんは特定の事柄について、こちらの知識レベルに関係なく、さもその事柄を知っているかのように話し出すふしがある。円滑なコミュニケーションを図るには、その事柄について検索し、概要の知識を即座に獲得し、「あ~ちょめちょめのほげほげですね」と返答する必要がある。
必要があるといっても、必須ではない。急ぎの作業でアップアップしている時は「ちょっと何言ってるかわかんないっす」(少々脚色を含む)と返す事もしばしば。
さて気を取り直して、Amazon Echo dot(Alexa)の字面と真剣に向き合う。
向き合った結果、「う~んよくわからん」と思った。
Amazonが開発したEchoがこだまするドットなアレクサなのだろう。こだまというワードのおかげで頭の中に広がる情景はすっかりもののけ姫だ。やはりこの貼ってあるURLを開くしかないのか。
早くURL開けやと思われるだろうが、いかんせんこの職場、業務に関する事以外でブラウザを使用してはいけない事になっている。
ブラウザで出来る事といえばプログラムのリファレンスを見るか、業務の検証をするか、会社の公式サイトを開き社長のご尊顔を拝むくらいだ。
いくら弊社の大先輩がURLを送ってきたからといって、ほいほい開いていてはいつかウィルスを掴まされることになる。
ブラウザがダメならならスマホで検索せぇやと思われるだろうが、この未知の字面「Amazon Echo dot(Alexa)」を理解するだけの時間、自席でスマホを触り続けるのはいささか抵抗がある。仕事はバレないように、上手にサボってナンボだ。
ではなぜ業務端末にURLが送られてくるのかというと、まぁ、つまりは、そういう事なのだ。人間、時にはルールを打ち破ることも必要なのだ。
小林さんも時には緩むし、自分は常にゆるゆるのだるんだるんだ。(厳格なルールが定められている場合はセキュリティ上の観点からおすすめしましせん)。
というわけで数分後、どうしてそうなったかは自分にはさっぱりわからないのだが、気付いた時には「Amazon Echo dot(Alexa)」の概要を少しだけ理解していた。
…内緒ですよ。
アレクサについて、以下のように理解した
- アレクサは人工知能の名前である
- Siri、ヘイGoogleと同じカテゴリの人なのであろう
- スピーカーである
- スピーカーにAmazonが開発したアレクサという人工知能が入ったものが「Echo dot」
- もっといえば、話し掛けるだけで家電を操作出来るスマートスピーカーである
- 家電を操作するには別途スマートリモコン(4000円前後)が必要
- テレビやエアコンなど、主流な家電のリモコンは大体登録されているらしい
- 登録されていなくてもマニュアル登録が出来るらしい
- 赤外線が無い家電は、スマートプラグ(2000円前後)を使えば電源をON/OFF出来る
- コンセントとプラグの間に挟む形で設置し、ON/OFFを切り替えるようだ
- 取っ手をひねって電源を付けるタイプの扇風機とかに使える?
- ニュースを読み上げてくれたり、Amazonミュージックの曲を再生出来る
- 液晶画面付きのアレクサもいるらしい
- 画面付きならAmazonPrimeビデオも楽しめる
- 部屋が複数ある場合、各部屋にアレクサを置いておかないと全自動化はキビシイ
- 「スキル」というものを追加すれば色々出来る
- スマホのアプリのようなもの。クイズとか、路線情報とか色々ある
家電を操作する為には、アレクサの他に何かしらの周辺機器が必要になる、ということだ。
ちょっと試してみますか~という軽い感じで試せる価格ではない気がする。
ということは、あれですか、小林さんは
- エアコンオン
- テレビ
- 照明3つ
- 空気清浄機
- 加湿器
- ホットカーペット
- サーキュレータ
- 扇風機
これだけの家電を声で操っているのですか。こっわ。遠隔オタクですか。エスパータイプですか。
チャットを受け取ってから既に15分、とりあえず一旦何か返事をしておかなければ。
「家電の鬼ですね。うちの扇風機なんて超激安で、赤外線とかありませんよ」
卑屈でコミュ障っぽさが滲み出でている返事である。ここは「アレクサすごいですね!欲しい!」とか言うべきシーンだと思う。
だが「そんなに設定するの超めんどくさそう」という思いが勝っており、いまいち興味が沸かない。ネット回線の切り替えにせよ、洗濯機の買い替えにせよ、家に新しいシステムを導入するというのは面倒くさがりにとってはどえらい精神的疲労を伴うことになる。
小林さんの返事は早かった。
小林さんのチャットより
「アレクサ、扇風機を付けて」
「アレクサ、扇風機の風量を3にして」
「アレクサ、おやすみ」
ちょうべんりー
なぜか扇風機マウントを取られている気がする。
本人にその気は無いのだろうが、「や~いお前ん扇風機、手~動ハンド~ル~!」と某カンタの叫びの如く、めちゃくちゃ見下されている気がする。きっと多大なる被害妄想だろう。
扇風機プライドを傷付けられた気になり、ムムッとなった自分は、「友人から買ったリングフィットアドベンチャー面白いです。ハッスルマッスル」と話を逸らした。矢継ぎ早にリングフィットについて熱く語った。
小林さんは既読スルーした。
ちくしょう。
ズタズタのぼろ雑巾になったマイハートであったが、4ヶ月後の2020年10月。Amazonセールを適当に覗いていると、なんとアレクサが50%OFFで販売されていた。安い。
そして自分は「Echo dot」ではなく、「Echo show 8」を買う事になる。スピーカー+8インチ液晶画面付きのすごいやつだ。これでもう小林さんにマウントを取られないぞ。
今では毎朝目が覚めると「アレクサ、朝の支度」と話し掛け、布団の中夢見心地でトップニュースを再生して貰っている。普段テレビを見ないので、久々の音声付きニュースに大変満足している。
後日、購入した事をチャットで小林さんに報告すると「👏」の絵文字1つだけ送ってきた。
おい、何か言え。
Amazonでは定期的にセールを開催しており、その間は「Echo dot」、「Echo show 8」含むアレクサ達をなんと驚きの50%OFFで購入できる。
Amazonはこんなにお安くバラまいて儲けがあるのだろうか。
50%OFFだと「Echo show 8」は14,980円→7,490円、「Echo dot」は4,980円→2,480円となる。
ちなみに「Echo show 5」(液晶5インチ)は9,980円→4,980円だが、5インチだと画面のサイズがちょっと大きめのスマホくらいなのだ。スマホでいいじゃん、となりそうなので8インチを買ったのであった。
キッチン用にもう1つ買おうかと思ったが、いかんせんコンセントと置き場所が無い。アレクサでクックパッドを開きながら料理をすべく、広い部屋に引っ越したいと思ってしまった、悔しい。まぁ、フル活用する為のリモコンを持っていないのだけど。
これを読んでいるあなたも、後輩に扇風機マウントを取る為にお一ついかがだろうか?
※補足※
小林さんのアレクサおすすめストークをブログに引用する許可は本人から頂いています。
「👍」の絵文字だけ。