【VRChat】再会の末に何も思い出せなかった話

「ごめんだけど、あなたは誰だい…?」
 
「「君の名は…!」」

 
 
火曜日。
 
気づけば三連休が過ぎ去り、平日の夜がしれっと訪れていた。
アバラ保護用のコルセットを腰にガッチリ装着して、VRChatにログイン。
 
英語のアプリを毎日やるように、VRChatもすっかり習慣化してしまった。
 
とりあえずログインしておけば英語を学べる。
そんなお得感が継続に繋がっているのかもしれない。
 
まず釣りワールドに入って、植物を回収し、種を植える。
匠の朝は早い。(夜10時)
 
竿をキャストして、ピチョンと浮きが水面に着水。
もちろん、ただボーっと釣ってるわけじゃない。
デイリーミッション消化のためだ。
 

艦これでイベント海域を完全スルーして演習だけやる、あの緩さ。
いやイベントは、やるのだけど。
重いタスクは厳しい。ポケモンスリープも無理だった。
このくらいが、ちょうどいい。
 
このくらいが自分にとってはちょうどいい。
 
 
  
あと1匹でミッション終了、という時だった。
 
背後から奇声。
 
「およよよよよよよ」
 
フレンドのたまごさんだ。

毎回心臓に悪い挨拶だ。
 
「およよよよよよよ」
 
一応挨拶を返す。
 
両隣には見知らぬ日本の釣り人。
少し恥ずかしい。
 
「みんな、およよチャンピオン目指せばいいのに」
「目指さないよ。君が5年連続チャンピオンだ」
 
この人はよく突然歌い出す。昨日はおどるぽんぽこりん。
たぶんゆで卵の食べ過ぎで脳がゆで卵化している。

自分はパブリックで歌わない。ミュートで歌うだけだ。狂ってはいない。


…とりあえずおどるぽんぽこりんを一緒に歌った。
隣の日本人は去って行った。
 
 
 
以前、たまごさんに16タイプ性格診断(MBTI)を聞いてみた。
 
彼はINFJ-Aだった。
自分もINFJ-A。
 
被った。

ワリと外交的な陰キャという属性が被った。
日本で1.8%しかいないのに、被った。
 
これで違和感の謎が解けた。

お互い会話に謎のオブラートをかける。
オブラート倍プッシュで、口の中どゅるんどゅるん。

INFJ同士だと、国家同士みたいな距離感になりがち。
「それじゃあ、君の領地は任せた」
「承知した」
 
弱みも悩みも見せない。自己完結型国家。
依存も協力もそこには存在しない。
 
でも慣れてくると、ニコニコしたペルソナが溶ける。
…下からまた別のペルソナが出てくる。
そして突然歌う。
その瞳は漆黒のブラックホール。
 
何か考えてるようで、何も考えてない。
 
そして突然、歌い出す。
 
~我々の頭の中は、常にブラックなダンスホール~
 
 
そして彼は歯をみがきに離席した。
 
あれ、もうやること無いんですけど。
デイリーミッションは既に終わっている。
 
彼を置いて日英交流ワールドに移動してもいいのだろうか。
 
こんな時のムーブがまだ分からない。
とりあえず目的を失ったまま竿を振り続ける。
 
そんな時、視界の下に通知が表示される。
 
『安藤さん joined.』
 
…誰?
 
フレンドが入ってきたときの通知には違いないけれど
 
だれだっけ。
 
安藤さんと、いつどこで出会ったのか、思い出せなかった。
 
女性なのか、男性なのかすら分からない。
 
 
安藤さんが他の人のところへ走り寄っていくのが見えた。
 
この世界では、フレンドの名前は黄色、それ以外の人の名前は白色で見える。
安藤さんの名前は、確かに黄色かった。
 
立ち止まり、女性と話してるようだ。
 
耳を澄ませば会話が聴こえそうな絶妙な距離。
会話の盗み聞きを試みる。
内容までは分からないが、どうやら安藤さんは男性らしい。
 
このまま見ないフリをするとどうなるか。
 
『黄色い他人』
 になってしまう。
 
黄色い他人とは、同じワールドにいてもお互いに覚えてなかったり
好感度が足りなかったりで挨拶ができない状態のフレンドを指すらしい。
 
自分はわりとサクっとフレンドを切っている。
数か月ログインしていなかったり、もう話すこともないかな思った人はパッと解除。
 
大きなグループに所属しないよう意識しているので、これで困ったことはない。
 
安藤さんという人はログインはしていたようで、そんな条件の解除対象外になっていた。
人となりを覚えてないから、切ってもいいのかも、判断できない。
 
よし、判断しに行こう。
 
女性との会話の隙間に差し込み話しかける。

「あのー、すみません、安藤さん…」
「ん!?」

彼ももちろん、自分のことを覚えていなかった。
 
「インドネシアの人たちといましたか?」
「俺インドネシア人だった!?」
「あれぇ…」
 
「絵師さんなら、ぽぴ横で絵描いてました?」
「絵は描かないすでねぇ」
「あっれー」

記憶の照合はことごとく失敗。

「記憶全部すれ違ってるじゃん(笑)」
 
と女性からの突っ込み。
まったくでござる。

唯一の手掛かりは、彼がシケモク君アバターを出したこと。
古いHDDの奥底にそんな写真があった…かもしれない。
4、5人のシケモク君がポピ横の道を吸い殻で汚していたのをうっすらと覚えている。

結局お互い何も思い出せなかったけれど、まぁきっと、そういうことだろう。
 
「よく声かけてくれたねぇ」
「いや~声もどんな人かも全く思い出せなかったので…」
「ここから第二章の始まりだ」
 
一体何が始まるというのです!?

ここで会ったがたぶん10か月目。

次にまた出会った時は、よろしくお願いします。

2回目限定の人見知りが発動しませんように。

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