小学校低学年の時だった。
家で留守番をしていたら『ピーンポーン』と鳴って、インターホンを取ったら「石川です」と聴こえて玄関に向かった。
扉を開けるとパンチパーマ、グラサン(色付き眼鏡だったかも)、金のネックレス、サラサラした生地に白黒ストライプのシャツ、サラサラのズボンを着た細身の男性がいた。
「これあげる」
そんな羽振りのいいおじさんがおもむろに2つの箱を渡してきた。中身は、ゲームボーイポケットと初代ポケットモンスター(赤)。
「ありがとぅ」
昔からふにゃふにゃぐにゃぐにゃしていたので、小声でお礼を言った気がする。
何を貰ったかは理解できた。2歳くらいの時にはゲームボーイでドクターマリオをしていたらしいから「小さいゲームボーイだ」という認識はあった。素直に喜んだかというと、微妙。ポケモンを初めて見たから「なんだこのソフト」って思っていたかもしれない。
手ぶらになった石川さんは、早々に帰っていった。
タイトルにもある通り、石川さんはヤクザだった。
石川さんの娘さんであるマナと自分は同じ幼稚園で、よく家族ぐるみで遊んでいた。マナの家に遊びに行くと石川さんが服を脱いで二の腕から背中、ケツまで広がるイレズミを見せつけた。「うっわー!」と声が出た。
そして石川さんの奥さんは、母の昔の彼女だったらしい。
うん。
そして今は亡き我が父は、よくスナックでホモホモ言われていた。
確かに、スナックではおじさんに囲まれてる時の方が嬉しそうだったかもしれない。
んんぅ。
父はホモで、母はレズだったようだ。
ファッションホモレズ?いや、バイか。
もうわけが分からないよ。さよならバイバイ。
石川さんが普段どうやってお金を稼いでいたのかは分からないし、裏で暴力行為もしていたのかもしれないけど、幼い自分にとってはおもちゃをくれる羽振りのいいおじさんだった。
そういえばたまごっちも大量に貰った気がする。
年末年始には「仕事行くとき、駅前で石川さんが正月飾り売ってたよ」と父が言っていた。
龍が如くのニワカ知識しかないけど、シノギにも色々あるんだなぁ。
色々とありがとう、石川さん。
石川さんはその後、奥さんと別れた。
あれ以来、石川さんの行方を知らない。
奥さんは再婚した。
まだ子供だったマナはグレた。
マナとは小学校が別になったけど、4年生の時に自分の小学校に転校してきた。自分は1組で、マナは2組だった。
転校初日。
隣のクラスが騒がしいなと覗きにいったら、マナは同じクラスの黒豚と呼ばれているジャイアンみたいな男子と殴り合いの喧嘩をしていた。
なんで?
マナに見つからないように家に帰った。
おわり。
今ではマナ家族の行方も、もう分からない。
どこかで元気にやってるといいなぁ。
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