「FF14やらないの?」
そのように、たまに聞かれることがある。聞いてくるのは職場の人であったり、友人であったり、インターネット上の人達と色々だ。
FFとはお察しの通り、あのFFだ。大人気RPGゲーム、FFシリーズの14作目。オンライン専用のゲームで、ジャンルはRPGではなくMMORPGとなっている。大勢の人がオンラインで繋がって、同じフィールドで同時に戦えるRPG。2010年に発売したらしいので、もう10以上年も運用していることになる。
友人のミコト(仮)はFF14にドはまりしている。
彼女のTwitterアカウントや、そのフォロワー周辺を覗くと、FF14の界隈は活気付いているように見える。発売から10年経っているにも関わらず、だ。
ミコトはネコ耳が生えたキャラクター(♂)でプレイしており、ゲーム内で付き合っている人がいるらしい。詳しく聞いてみると、相手もネコ耳が生えたキャラクター(♂)だとか。そして中の人は両方とも女性。他の人から寝取った、とか言っていた。ゲーム内で寝取りとは…!?…なんというか、色々な愛のカタチがあるのだなぁ、と思った。
FF14をオススメする人たちは、安定、安心の面白さを実感しているからこそ、自信をもって他の人に問えるのだろう。
そうはいっても、最近「FF14やらないの?」と聞かれるたびに「いや~オンラインゲームは、時間がかなり取られますからね~」と、やんわりと断っている。人間関係が重要視されるゲームは、やらない方が平和だ、と密かに考えながら。
彼らも本気で誘っているわけではないと思うので、断ったところでその後の付き合いに影響があるわけではない。
「やらないの?」や「やりましょうよ」という言葉は、イコール「一緒に遊びましょう」という意味ではない。「面白いからオススメ」程度のノリであり、一種の社交辞令だ。この真実に気付いたのは社会人になってからであった。
◆始めて、すぐに終わったFF14
実は数年前に、少しだけFF14を遊んでいたがある。ほんの数か月だけだったが、これぞ人生という体験をした。
始めたきっかけは、Twitterの相互フォロワー。彼らは数人でグループを作ってFF14をプレイしていた。
彼らがTwitterへ投稿するゲーム内の写真は、とても綺麗だった。キャラクターが可愛く、そしてイケメンである。背景のグラフィックにも興味を惹かれた。FFシリーズといえばこの美しい3DCGと言える。
いつだったか、その中の誰かから「FF14やりましょうよ」と声を掛けられた。
え、ほんまですか?
社交辞令だったかもしれない。だがその時にはすっかりFF14に興味を惹かれていた。断る理由もないだろう。
自分なんかが、やっちゃっても、いいんですかね?
声をかけて貰ってからしばらくして、ついにPlayStation4にFF14をインストールした。キャラメイクのメニューには通常の人型、ネコ耳型、たくましいゴリラ型など、いくつか種族が並んでいる。その中で、エルフ耳の小さく愛らしい種族を選んだ。名前はよく覚えてないけど、ハムスターみたいな名前にしたと思う。「ポチ」や「タマ」ではなく「いぬ」や「ねこ」と名付けるようなものだ。
こうしてハムスターと名付けられた4頭身のちびキャラは、まだ見ぬな剣と魔法の冒険へ旅立った!
…と勢いよく飛び出したはいいが、数か月後、引退してしまった。わざわざキーボードを買い揃えたりしたのに、なんてこったい。
なんというか、いろいろあって、疲れてしまったのだ。
大した理由なんて無いのだが、よければ経緯を聞いていってほしい。疲れてしまったといっても、ちゃんと楽しんでいたこともお伝えしたい。
◆Twitterの人達のギルドに入る
FF14で冒険を始め、基本操作にも慣れてきたところ、Twitterの人達からギルドへ招待された。
耳馴染みのない人もいると思うので、ギルドについて一応補足。
ギルドとは、気の合う仲間やおなじ目的を持つ人があつまってグループを形成するシステムだ。RPG寄りのオンラインゲームで、よく耳にする名称かもしれない。FF14でギルドと言うと、本当は別の意味になるのだが、一般的な呼び方に寄せてここでは「ギルド」と呼ぶことにする。
FF14のギルドには以下の2種類がある。
・同じチャットルームを利用出来るギルド ・上記に加え、特定の土地に一軒家を建てて皆で住むギルド
前者が友達や仕事仲間、後者が家族のようなものだろうか。
彼らが運営していたのは、同じチャットルームを利用できる前者のギルドだった。
彼らは日々チャットで会話をし、パーティを組み、レアアイテムが眠るダンジョンへと潜っていった。
最高レベルにまで鍛え上げられた彼らは、会話のレベルも高い。正直、FF14ペーペー初心者にとって、彼らが何を話しているのかさっぱり理解できなかった。未知のワードがちょいちょい混じっている雑談に踏み込んでいくことも、もちろんできなかった。
コミュ障とか言っては、いけない。
数日後、このギルドを離れることになる。パーティを組んでレベルを上げたり、みんなで仲良くダンジョンへ潜る…なんてことを体験しないまま、楽しい会話を交わさないまま。ログイン、ログアウト時の挨拶もしなくなり、少しずつフェードアウトしていった。
このゲームで一緒に遊ぶには、会話をするには、とにかくレベルを上げないといけないのだろうか。うーん、難しい。
◆釣りたのしい
Twitterのギルドに顔を出さなくなり、数週間が経過した。
話し相手も、緒に遊ぶ友達もいない悲しきハムスター。戦闘レベル上げのパーティにも参加できないハムスター。(戦闘のパーティは知らない人とランダムでマッチングされる。怖ろしい)
そんなコミュ障ハムスターが唯一没頭した遊びが、一人でもできる釣りだった。
ただひたすらに、黙々と釣っていた。数種類の釣り餌をカバンに詰め、あらゆるフィールドの海や川、湖まで遠征し、時にはとても強いモンスターの後ろを通り抜け、適切な魚をただひたすらに釣る。
正直、これは楽しいぞ…!
効率的に釣るためのマクロ機能も覚え、レベルが着実に上がっていく面白さを噛み締めていた。
ハムスターはアッ!という間に立派に育ち、戦闘レベルが20、釣りのレベルは50になっていた。
ん?戦闘レベルに対して、釣りレベルが2倍以上ある。おかしい。まぁいっか。
海に向かって釣り竿を振っている最中、後ろを通り過ぎるプレイヤーキャラクター達。自分にとってそれらはランダムに動き回るNPCと変わらなかった。
オンラインゲームってなんだっけ。
同時参加型って、なんだっけ…
◆変人に囲まれる
ぼっち釣り生活をエンジョイしていたある日、釣り餌を補充しに街へと戻った。釣りのレベルを上げるためには、この白を基調としたレンガづくりの街に滞在することになる。
ハムスターの故郷は土と緑に囲まれた目に優しい街並みだったので、白っぽい街並みは妙に眩しく感じた。
白レンガの階段にハムスターを放置して、スマホをいじっていた。
数分後、ふと画面に目を向けると、「あ¨んっ!?」と声がでた。
そこには、強そうな鎧を装備したでかい人間♂と、白い道着を身に着けたでかいネコ耳人間♀が、ハムスターを取り囲んでジャンプを繰り返しているじゃないか。
(4頭身のキャラを操作していると、みんなでかく見える)
「ジャンプ!ジャンプ!」
でかい人間がチャットで叫ぶ。あまり覚えていないのだが、そんな事を言われた気がする。
「!?自分のことですか?」と一応返事をしてみる。
でかい人間は頷いた
でかいネコ耳人間は頷いた
と色付きの文字がチャットログに流れる。キャラクターが頷いたりお辞儀をすると、自動的に表示されるシステムメッセージだ。
わけも分からず、ジャンプした。でかい人間と、でかいネコ耳人間と3人で。円を描くように、走りながらジャンプした。
数分間のジャンプ。夕日を受けて輝く白レンガ、輝く3人の汗。青春。(※キャラクターは汗をかかない)
額に輝く汗をぬぐいながら、でかい人間が唐突に言った。
「君、ギルドに入りなさい」
なんで?
直後、勢いに飲まれてギルドに入ることになってしまった。
いや、なんで??
何という事だ。人を避けるようにして、ここまでうまくやってきたのに…。
◆お家と仲間
勢いで入ってしまったギルドは
・同じチャットルームを利用出来るギルド
・上記に加え、特定の土地に一軒家を建てて皆で住むギルド
のうちの後者だった。土地と家をあわせて買うと数百万円~、立地がよかったり土地が大きいと数千万円はするらしい。
自分ではどう頑張っても時給5万もいかないので、途方もない価格だ。頑張るといっても、沼地に生えている草を刈り取って売るだけなのだが。
2人はギルドの役職付きだった。
でかい人間♂がギルドのリーダーであるギルドマスター(以下ギルマス)。性格は下ネタ・適当・何でもござれのガハハ系。
でかいネコ耳人間♀がギルドマスターをサポートするサブマスター(以下サブマス)。性格は生真面目・効率プレイ系。
性格にかなり違いがあるように見えた。
ギルマスとサブマスは同年代の学生で、以前は他のゲームで一緒に遊んでいたのだとか。いや~若いっていいね。ちなみにでかいネコ耳人間♀の中の人は♂だった。残念だ。
他にも何人かメンバーがおり、FF初心者でも話に入れる雑談でチャット欄は賑わっていた。ギルマス・サブマスを含め3人とTwitterで相互フォローになった。
そんなこんなで、釣り具屋を活動拠点としていた野良ハムスターは、一転して家飼いのハムスターへと出世したのである。
ギルドの一軒家はできたてほやほやだったようで、みんなで家具を持ち寄り室内を飾り付けることになった。なんてこったい、ハムスターは釣りしか能がない。家具を作るスキルなんて…でも、何か用意せねば…
あれこれ考えたが結局、森林のフィールドで木材を伐採し、低レベルっぽい加工を施し、安っぽく仕上がった小さな椅子を部屋の隅っこに置いた。
次第にギルドの空気にも打ち解け、1日に2~3時間ログインしてマイペースに遊ぶ日々が続いた。
ストーリー上、どうしてもパーティを組む必要が出てきた場合は、ギルドの人たちが集まって攻略を手伝ってくれた。むしろ、手伝えることある?とすら聞いてくれた。コミュ障にやさしい。
ギルマスとは明け方までチャットで盛り上がるほど親交を深めていた。
なんだかんだで、この頃までは楽しかったのだ。本当に。
長くなったので記事を分けます。この先生きのこれるのか…!?
次回↓
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[…] ちなみにミコトは前の記事で少し語ったが、FF14でミコッテ(♂)を使っていたからここではミコトと呼んでいる。 […]